募集終了2022.03.18

300年つづく文化の担い手として。香りの可能性を探求し、あまねく広く世の中へ

烏丸御池の交差点を北へ向かうと、どこからともなく漂ってくる和の香り。どこか落ち着きのある優しい匂いに、懐かしさや京都らしさを感じたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

香りのおおもとは、創業から300年以上にわたりお香をつくってきた「株式会社 松栄堂(しょうえいどう)」。

本社近くの二条通りは、江戸時代には国内外からさまざまな薬が届いていた歴史があり、今でも漢方薬・薬問屋が残っています。お香の原料も手に入りやすかったことから、烏丸二条の地で創業しました。

明治40年頃の写真。

歴史をさかのぼると、「お香」は、飛鳥時代に仏教とともに大陸から日本へ伝来してきました。宗教の儀式や貴族の生活のみで使われるとても貴重なものでしたが、江戸時代になると市井の人々のもとへと香文化が広がっていきます。
300年あまりの年月にわたって、香りを通して人々の生活を彩ってきた「松栄堂」。本記事では、企画や営業など、さまざまな部署に配属される総合職の仕事をご紹介していきます。

香りのある生活の楽しさを、広く届けていくために

「好きな香りはありますか?」と聞かれた時に、みなさんはどんな香りを想像しますか。食べものの匂い、花木の匂い、あるいは実家の匂いなど、思い出とともにさまざまな香りのイメージが浮かんでくるかもしれません。

「身近なところに『香り』がある楽しさを、まずは知っていただけたら嬉しいですね」と語るのは、専務取締役の畑 元章(はた もとあき)さん。

「例えば、旅行中に街を歩くと、食べものや地域特有のお商売から、その土地ならではの香りが漂ってきますよね。私は、仕事を終えて帰宅したときのごはんの匂いが好きなんです。子どもが生まれてからは、女の子と男の子、それぞれに赤ちゃん特有の匂いがあることにも気がつきました」

意識を向けてみると、私たちの日常はさまざまな香りで溢れています。

「私たちが300年つづけてきたのは、お香をつくること。創業時から変わらず、和の香りに携わることを基本としてきました。けれど、みなさんのライフスタイルは日々変化していきます。いわゆる『伝統産業』という切り口だけではないお香の伝え方を、私たちも考えていかなければいけません」

畑専務のお話によると、日本に続く文化のなかには、発祥の地となる東洋文化圏ではすでに歴史が途絶えてしまったものもあるのだとか。

「以前お聞きした話では、かつては同じように文化として存在していたものの、ある国では言葉だけが残っていたり、またある国では美術館や博物館に収蔵されていたりします。生活の延長に文化がなければ、たとえ『伝統』であっても失われてしまうことを知りました。これは決して他人事ではなく、私たちの身にも起こるかもしれない未来なんですよね」

少し視野を広げてみると、ルームフレグランスやアロマディフューザー、食品香料など、毎年のようにトレンドが変わっていく香料業界。どうすれば香文化を広げていけるのか、また、新しいお客さまと出会っていけるのか議論を重ね、松栄堂は2018年に、香りと出会う場「薫習館(くんじゅうかん)」を本店横にオープンしました。

1FにあるKoh-labo「香りのさんぽ」は、原料からお香ができるまでを学べる空間です。

「新しい価値の創造プロジェクト」という全社の取り組みで、社員から募ったアイデアをもとに誕生した「薫習館」。松栄堂が考える香りの魅力をどのように伝えていくか、構想から2年間の月日をかけてオープンに至りました。

「オープン後、お越しになったインバウンドのお客さまから『これまで香水をいろいろ試してみたけれど、松栄堂のお香がいちばんよかった』とコメントをいただいたことがありました。私たちが携わっているのは、香りの世界のほんの一部かもしれませんが、自分たちにしか提案できない香りがあると感じました」

薫習館のほかにも、社内プロジェクトを通してさまざまなアイデアが提案され、2020年にはお香の移動販売車「ことことワゴン」が走りはじめます。

「社員からは、商品開発や販売方法、働き方についてさまざまな提案がありました。『クラブのような場所でお香を使ってもらうとしたら?』という発想もおもしろかったですね。そのなかで、フードトラックのようにこちらから出向いてお香を販売してみるのはどうか?と、移動販売のアイデアが出てきたんです。実際に走らせてみるとお客さまからも好評です」

ことことワゴンはマルシェやイベントに出店。「お香を使ってみたかったんです」「久しぶりにお香使ってみようかな」というお客さまからの声も。

「さまざまなチャレンジを重ねてきたこの5年間は、私自身も“変わらないために変わりつづける”という言葉を大切にしてきました。商品開発はもちろんのこと、日々の業務においてもまだまだ改善の余地はあると思っています。お客さまにとって、また、働く自分たちにとっても良いことであれば、新しいアイデアや技術は積極的に取り入れていきたいですね」

お香の製造過程

現在、全国に9つの直営店があり、全体でおおよそ300名の社員・スタッフが働いています。松栄堂の仕事は、明確なマニュアルが示されているわけではなく、一人ひとりの経験をつなぎ、「口伝(くでん)」をベースに受け継がれてきました。

「お客さまからも、店舗での接客や電話の対応、お納めした商品の仕上げなどさまざまなシーンでお褒めの言葉をいただきます。ともに働く一人ひとりの力が、会社全体の空気としてお客さまに伝わっているのではないかと受け取っています。事業規模が大きくなるに連れ、私自身もマニュアル以上に残していけるものは何かを考えているところです」

朝礼で唱和する社員信條。5つのうち「感謝」にだけは解説がありません。「そこに考える余白があると感じています」と畑専務。

これまでの積み重ねを土台にさまざまなチャレンジを進めている松栄堂。今回の求人では、香りのある生活の魅力を伝え、香文化を未来へつなぐ仲間を募集します。

香文化とお客さまとの接点を見つけていく

つづいてお話を伺ったのは、営業二課催事企画担当の小池 克弥(こいけ かつや)さん。2012年に入社後、製造部に配属。催事企画部に異動してからは、全国のデパート・百貨店などで開催している催事の企画・運営を主に担当してきました。

小池さん(写真左)

最盛期には、年間100会場以上出展していた百貨店での催事。時代の流れや新型コロナウイルス感染拡大により、現在は出展の機会が半減してしまったのだとか。もともと部署が分かれていた催事企画部と営業部がひとつに統合されていくなかで、改めて“営業部のミッションとは何か”を考えたそう。

香りある生活の魅力を伝え、香文化を未来へつなぐために、Instagramのアカウント開設やアプリの開発、オンラインを活用した取引先へのセミナーの企画など、小池さんはそれぞれの立ち上げに関わり、コンテンツ企画にも携わっています。

「社内でもSNSを活用したいという声が出ていたんです。これまでお香に馴染みのなかったお客さまとも、どのように出会っていけるかを考えるのが私たちの役割ですね。Instagramやアプリでは、器や道具とともに“香りある豊かな暮らし”を提案する『香(コー)ディネート』という連載企画をお届けしています」

「老舗」と聞くと、言葉としての重みを感じてしまう一方で、新しいアイデアをどんどん提案していける環境だと、小池さんは語ります。

「社内プロジェクトから薫習館が誕生したことで、部署間のコミュニケーションが以前よりも活発になりました。営業部では、日本各地へ足を運んでいるメンバーとも、月に1,2回『作戦会議』というミーティングを行っています。セールス方法を見直したり、新たな販売方法を検討したりするなど、進行役がテーマを決めて自由にプレゼンテーションをしています」

松栄堂をはじめ、京都には多くの老舗企業があります。横のつながりも大切にしながら、文化の担い手として、京都やお香に関心のある方へどのような価値を提供していけるのかを、営業部は日々考えています。

「社長も話されるのですが、京都は本当に『文化』のテーマパークのような場所だと感じていて。私たちがお香について考えているのと同じくらい、それぞれの老舗企業が歴史や文化と向き合っているんです。文化を支えてきた人々の思いに触れながら、私たちも担い手の一人として、京都にお香があることを伝えていきたいですね」

見本市出展時の様子。

「一方で、私たちが販売しているのは『香り』ではなくあくまで『お香』。例え同じ香りでも、出会う場所や心情によって受け取り方が変化するものなので、販売していることに対して責任も感じています。伝え方を考えるおもしろさもあれば、伝える難しさを感じることもあって。だからこそ誠実に向き合う価値がありますし、これから一緒に働くみなさんとも、そうした価値を共有していけたら嬉しいです」

文化の伝え手として、京都ならではの体験をつくる

つづいてお話を伺ったのは、2016年に入社した営業一課の若林 真友花(わかばやし まゆか)さん。小池さんとともに、どのように香文化を広げていけるかを考える若手の一人です。

営業がとにかく楽しい!と語る若林さんが、松栄堂らしさを感じたのは、はじめてBtoBの展示会を経験したときのこと。新規の取引先を獲得しようと意気込んでいたものの、手応えを感じられないまま会社に戻ってくると先輩からは意外なひと言がかけられました。

「個人のお客さまに松栄堂を知っていただくことはできましたが、取引の話までは至りませんでした。そのことを先輩に正直に話すと、『一人でも多くの人に松栄堂を知ってもらうことができれば、それは十分成果だよ』とコメントが返ってきたんです。創業者である畑家の家訓に表わされているのですが、特定の誰かではなく、半歩ずつでもさまざまな方に着実に知っていただくことが大切だというスタンスが松栄堂らしいと感じました」

細く長く曲がることなく、
いつも、くすくす、くすぶって、
あまねく広く世の中へ

畑家に代々受け継がれてきた家訓。お線香の煙が燻る様子になぞらえ、さまざまなお客さまにお香を楽しんでもらうための心構えとして社員のみなさんにも伝えられています。

香りは大切な記憶を呼び起こしてくれるもの。若林さんがはじめてお香を焚いたときに思い出したのは、家族旅行で訪れた京都の記憶だったそう。

「香りとともに訪れていたお寺や料亭での情景が浮かび、家族旅行の楽しかった思い出が蘇ってきたんです。こんな幸せな気持ちにさせてくれる『香り』の魅力を伝える仕事って楽しそう!と、松栄堂への入社を志望しました。現在は、これまでお取引をしていなかった場所でもお香を使ってもらう方法はないか、日々提案を考えています」

2022年2月に販売開始となった「Kohdion」。アコーディオンのような形状で、インテリアとして香りを楽しむ商品です。

お香の周辺には茶道や華道をはじめ、さまざまな歴史や文化が残っていて、それぞれを知ることで知識が広がっていくおもしろさを感じています。また、入社してから、『薫習館』や『ことことワゴン』を通してさまざまな文化の伝え方があることを知りました。これから5年、10年先を考えることが本当に楽しみです」

現場から必要とされる余白を見つけていく

最後にお話を伺ったのが、2020年から経営計画室で働く小池 暁子(こいけ あきこ)さん。

畑専務のお話にもあったように、300年以上にわたって「口伝」がベースになっている松栄堂の知識や技術を、ひとつずつ会社のノウハウに変えていく役割として、進行事業のスケジュール管理や業務課題の改善など、部署間を横断しながら裏方として支えています。

「社内で進行する数々のプロジェクトを、経営計画室が伴走しながら進めていくために、システムの運用をはじめました。社員が課題だと感じたものをシステムに登録してもらい、経営計画室が課題解決に伴走していく流れです。登録された内容をもとにヒアリングすると、担当者の頭の中だけに記憶されていたり、それぞれのメモに残されたりしている口伝えの情報が多くあることに気づきました」

2020年にシステムの運用をはじめてから180件ほどの登録があり、なかには一年半以上にわたって取り組んでいるプロジェクトもあるのだとか。

「登録された項目のどこに課題があるのか、理由を掘り下げていくと膨大な過去の積み重ねから整理をしていく必要があるものもあって。ときには、異なる部署で近しい課題を抱えているケースもあるので、部署間のコミュニケーションを促すなど、状況にあわせたサポートを行っています」

小池さんが立ち上げに携わった「香音」大丸 福岡天神店。

2005年に入社後、営業事務、催事企画、新店舗立ち上げ、外回り営業、薫習館の立ち上げなど数々の事業を経験してきた小池さん。

「新店舗の立ち上げのために、現地担当者として約1年半福岡市に赴任したことがありました。振り返ってみると、業務内容について事細かなオーダーがあるわけではありませんでした。その場に必要だと思うことを自分で考え、会社に提案していく余白が残されているのは松栄堂らしいと感じますね」

産休・育休を取得し、現在は子育てのために時短勤務をしている小池さん。職場の応援やサポートもあり、仕事も家庭も大切にできる環境だとおっしゃいます。

「入社した頃は、世の中的にも『寿退社』という言葉が一般的で、女性は『仕事』か『結婚』を選ぶことが求められていたように思います。松栄堂は、2014年から産休の取得率が100%になり、長く働きやすい環境になっています。仕事の内容も、男性だから・女性だからということはなく、いい意味で線引きが曖昧になってきたように思いますね」

香文化の伝え手として、300年以上にわたり誠実なものづくりをつづけてきた「松栄堂」。同時に、明治時代に日本ではじめてアメリカへお香を輸出したり、シカゴ万博に出展したり、1989年にインセンスショップ「リスン」をオープンするなど、香りを広げるためのさまざまなチャレンジを行ってきました。

日々の生活に「香り」がある楽しさを広く世の中へ届けていくために、一人ひとりが文化と向き合い、香りがもつ可能性を探求している様子がひしひしと伝わってくる取材となりました。300年つづく香文化の担い手として、新たなチャレンジを重ねてみませんか。

※本記事はBeyond Career事業にて受注・掲載した求人記事となります。Beyond Careerについてはこちら

編集:北川 由依
執筆:並河 杏奈
撮影:岡安 いつ美

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